企業インタビュー
前人未到の形状に挑み、ひるむことのない開発を目指すプロフェッショナル。世界シェア60%はダテじゃない
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工場を見学させていただき、図面から製品が出来上がるまでのものづくりの行程が良くわかりました。では、最初に創業のきっかけを教えてください。
祖父が戦後に大阪から岡崎に出てきて、軍需産業が衰退し、使わなくなった旋盤などを、オーバーホールして売っていたのが始まりです。しだいに自社でも旋盤を作るようになり、ある程度の規模になりましたが、競争が激しく、やがて数では対応しきれなくなり、結果、現在のピストンリング加工専用機を製造する工作機械メーカーとなりました。
片岡さん自身がここで働こうと思ったきっかけは何ですか。
末っ子でしたが、他に血縁者が社内に居なく私に勧めがあり、私自身、身を固めるにはいい機会と思い承継しました。
仕事を始めて何年になるのですか。
約10年です。
仕事の中で印象的な出来事は何ですか。
現場にいたころ、よく海外出張をしました。異文化の人と仕事をする苦労を痛感したことです。
例えば、中国へ出張すると、「時間になっても会議が始まらない」、「人が集まらない」、「商品が予定通りに届かない」などのことは印象的でした。さらには、現場で道具類の紛失も頻繁にありました。
また、ヨーロッパでは、昼食時にビールを飲む自由な現場が多かったことが印象的です。
仕事をするうえで大切にしていることは何ですか。
品質のいいものを作ることです。納期が迫ると、焦りから雑になります。慎重に焦らず丁寧にこなすことを心がけていました。
今は生産管理をしていますので、心がけていることは、納期の厳守と、「報連相」の実行です。例えば、外注に図面を出すだけでは、到底完成度が低く、難しい図面になれば成る程、綿密な打ち合わせの上、心配要素を徹底的になくします。
仕事の中で魅力的・面白ことは何ですか。
受注から設計・手配・加工・組立・電気調整・試削・検収・出荷・現地立会、最初から最後まで全部が見えることです。
逆に大変だったところ、つらかったところはありますか。
納期が短く、急いで作らないといけないときは、夜通し作業になり、夜中3時まで仕事をしたこともありました。また、失敗したり、納期に間に合わなく、怒られた時も辛かったです。
仕事を継ぐために特に頑張ったことは何かありますか。
最初は、現場作業からでしたし、掃除もやりました。今でもやりたいですが、現場で真っ黒になり、がむしゃらに働きました。現場作業には危険も伴いますが、危険は自己管理次第で対処はできるものです。
「ひるむことのない開発」と資料に書いてありますが、最近はどんな物を開発しましたか。
ピストンリング専用機がメインですが、長いカムシャフト加工機を手がけるようにしています。一般的な形ではなく、異形状のものを加工する機械に特化したいです。
単純な丸い形であればそれほど技術はいらないのですが、卵型・洋ナシ型の異形状は、職人でも難しく、それらをCNC化して、加工をすることを積極的にしていこうと考えています。製造を一貫していることと、特殊な形の技術を得意としていることが「ひるむことのない開発」に繋がります。
現在取り扱っている機種の種類はどの位ですか。
約100機種です。
輸出は中国向けが多いですか。
ここ1、2年は、6割以上が中国です。世界経済を引っ張っているのは中国だと痛感する瞬間でもあります。ここ数か月は先進国・新興国を問わず、工程の集約化・無人化の要望が各国から求められています。
特注で機械を作ることもあるのですか。
あります。特注で機会を製作する場合、採算ベースに乗せることは、非常に難しいですが、新しい技術が生まれるので、積極的に挑戦しています。現状維持=衰退と当社は考えており、無理をしてでも新規のものに挑戦しようとするのが、当社の方針です。
設計から製造まで一貫して当社でできることが強みです。
今後の夢としては規模を大きくするというよりは、技術を上げるということですか。
大きくするよりは、同規模で高付加価値なものを作っていきたいです。
ピストンリング製造機械で世界シェア60%とのことですが、こちらから営業するわけではなくて必要としているメーカーのほうから引き合いが来るのですか。
世界シェアが60%と言われていますが、現実、日本国内でピストンリングのメーカーは3社しかないですし、ドイツのメーカーの技術力が高い。ただ、お客様は、当社の製品を一度使って、品質の良さを分かっているので、最終的には、当社が選ばれています。ただ、世界シェア60%って言われるのは、大げさな言い方だとは思っているんですよ。
若い人は海外へ出たほうがいいと思いますか。
思います。やはり日本だけではなく異文化を知ることは大事です。私は、高校を卒業してすぐ、アメリカに1カ月ほど滞在したことがあり、色々な文化を知るいい経験をしました。
アメリカ、中国、のほかにはどこへ行きましたか。
取引先が23カ国ある中で、その内、アメリカ、中国、韓国、台湾、インド、インドネシア、スウェーデン、ポルトガル、タイに行きました。
いちばんその中で良かった国はどこですか。
ポルトガルです。ヨーロッパのイメージは、古い町並みと思っていましたが、実際は、石畳の街で、古い教会あり、街並みの綺麗な景色が印象的でした。女性に人気があるのがわかりましたね。町を歩いているだけで観光気分です。
これから行ってみたい国はありますか。
イスラエルに行きたいです。
危険なイメージがありますが、IT産業が盛んです。製造業でも、刃物、チップなどのメーカーがイスラエルにあり、斬新なアイディアがいっぱい出てくる国で、ぜひ一度、イスラエルに行きたいと思っています。
他には、北朝鮮も一度行ってみたいです。この国が良くなれば人件費も安いので、工業都市としの可能性があります。大企業の人でも北朝鮮に工場建てたいという話をよく聞きます。
学生向けに・学生のうちにやっておいた方がいいことがあれば教えてください。
昔から、「若いうちの苦労は買ってでもしろ」とよく言われますが、その通りです。様々なアルバイトをして、社会の仕組みを知る。それが大事なことだと思います。勉強も大事だと思いますけど。
必要とする人材はどんな人ですか?
限界を決めつけず、新しいことにチャレンジできる職人意識な人がいいですね。