企業インタビュー
農業生産法人 磯田園製茶株式会社
取締役社長 磯田 尚久 様
日本茶インストラクター
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店舗を見せていただいて、色々な種類のお茶があることに驚きました。まずは会社の歴史について教えてください。
きっかけは昭和26年に現会長が豊橋の親戚が経営していたお茶屋を手伝い始めたことです。そこで経験を積み、その後昭和29年にお茶の栽培が盛んであった田原市で創業しました。当時は販売ルートが少なかったので、現会長がそのお茶を京都や静岡へ販路を広げ、そして、高度経済成長の中で、徐々に規模を大きくしていきました。
昭和40年代からは直営店舗を始めまして、その出店の第一号がここ新天地(現岡崎シビコ)でした。そして、ショピングセンターの時代とともに、全国展開し、現在では25店舗を経営しています。
また、現在「農業生産法人」として、田原市に茶畑を17ヘクタール所有し、約30ヘクタールの畑を栽培しています。そこで栽培したお茶を自社で製造し、小売りや通販も含め様々なところへ販売しています。
創業当時から伝わっている大切なことはありますか。
「たらいの水」という言葉です。会長がよく言われるのですが、まず、最初に自分から相手が得になることを提供し、それが後で自分に利益として返ってくる。「たらいの中の水」に例えると、「押し出した水が循環して手前に戻ってくる」という考え方です。そして、たらいの中の水が付加価値や利益となりますので、それを創造することが、大切な仕事だと思っています。
なるほど。では「たらいの水」を磯田園さんの事業に当てはめると、具体的にどんな感じですか。
商売するためには商品が必要です。その商品を売るためには、商品の情報を発信したり、サンプルを提供し、購買意欲を起こし、購入してもらって利益を得る。それをものすごく短い言葉で表すと「損して得取れ」や「たらいの水」という言葉になると思います。
では会長の言葉以外で大切にしているものはありますか。
「orではなくandで考える」ことです。「この意見とこの意見、どちらが良いか」、「この商品とこの商品、どちらが良いか」、という二者択一の考え方もありますが、そういった考え方は、どちらかを否定してしまいます。確実な答えがあるものであれば、「AかBのどちらかで」、となりますが、「こちらも良いが、あちらも良い」という考え方もできるはずです。同時には成り立たない場合もありますが、その人なりの考え方には価値があり、複数の選択肢の中で必ずしも一つを断定する必要はないと思います。そういった考え方を持つことで自分が悩むことも少なくなりましたし、とにかくやってみよう、やってみてからと思えるようになりました。
その考えに到達したのはいつごろからですか。
5年程前にコンサルタントの先生と話をしていた時です。たくさんのことを考えながら勉強していくと、どれが1番良いのか迷います。そこで、コンサルタントの先生に「どちらが良いですか」と聞いたところ、「どちらも良いと思いませんか」と言われ、そういう考え方もあるのだと気づきました。
そういう考えになってから視野は広がりましたか。
はい、広がりました。自分が楽になりました。究極の選択をしなくて済みますし、悩み続けることが少なくなりました。
経営理念など、社員全員が共有している目標はありますか。
経営理念として「社会奉仕」を掲げています。実は「社会に貢献して自分が儲からなかったらどうなるだろうか」と悩みました。それを明確にしたのが「社会」という言葉の使い方でした。「社会」というのは自分がいて、自分と相手2人、例えば、家族であっても2人以上であれば、それは社会であると捉えました。そして、家族だけを大事にするのではなく、この人さえも大事にできないのであればこの大きな社会に貢献できないではという考え方に変わりました。そう表現することで、会社の利益と社会奉仕の矛盾がなくなりましたね。
集客はDMが主とのことですが、DMを始めたのはいつですか。
実験しながら少しずつ始めましので、時期ははっきりしていないのですが、こういうマーケティング手法もあることを知り、試してみようと思ったのがきっかけです。インターネットの楽天には以前出しましたが、当時はまだ浸透してなく、あまりメリットがなかったので止めてしまいました。当店に来るお客様の年齢層では、やはりDMが今の所一番効果的です。しかし、今はまた変えなければとも考えています。
お客様に情報を伝えるために気を付けていることは何ですか。
お客様の立場に立つことです。お客様の性別、年代、生活環境を考慮し、そのお客様が、このタイミングではこのように考えて、このように行動するだろうと予測し、その行動を促すための、メッセージを流すよう心掛けています。
お仕事を続けている中で転機はありましたか。
12年前に経営者になり、転機と感じる大きな出来事はありませんでしたが、実際には「orではなくand」の考えになったときだと思います。
また、国の「農業を大切にし、海外に売り出していきたい」という政策を活用していきたいと考えていますので、農業生産法人にしたことは、今後、転機になるかもしれません。
農林水産大臣賞を受賞されたそうですが、そのときは転機ではなかったですか。
大きな転機という転機ではなかったかもしれないです。逆に今言われたっていうことは、これから使ったほうが良いかもしれないですね。
受賞された時にはどんな気持ちでしたか。
受賞した時は、安堵感でした。地元開催の大会で、大勢の皆さんにご協力いただいて、なんとか地元の深蒸し煎茶が受賞されなければいけないと思っていましたので、受賞できたときは正直嬉しさと、ホッとしたというのが正直な感想でした。
それでは最後に、これからこの会社をどのようにしていきたいか、教えてください。
経営理念の「社会貢献」もそうですが、スタッフそれぞれの「人生の夢」の実現の場にしたいと思います。
私自身は、世の中の流れをよく見て、現状のお茶屋だけに縛らず、色々なビジネスを勉強し、商品を考え、色々な人との関わり合いを持つことで、色々な情報を得ようと思います。海外の情報も意識し、ビジネスチャンスも増していきたいです。
「どれが」だと「or」になってしまいますから、色々な方法を試みて、「and」の考えで進みたいと思います。 色々な縁を大切にして。
〜磯田さんのお話を伺って、お茶のことのみならず、ビジネスについても色々勉強させていただきました。今後就職した後の参考にさせていただきます。ありがとうございました。〜
インタビュアー:岡崎女子短期大学経営実務科2年:中野、伊藤
写真:同1年 皿井、渡邉
企業情報
企業名 |
農業生産法人 磯田園製茶株式会社 |
代表者名 |
磯田尚久 |
所在地 |
〒444-0059 愛知県岡崎市康生通西1-1(岡崎支社) |
TEL |
0564-24-2202 |
FAX |
0564-25-3100 |
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