企業インタビュー
お客様の笑顔を見るために、汗水流して努力する石のスペシャリスト!!!
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なぜ石屋をやろうと思ったんですか?
そうですね、家が石屋だからって言うのが率直な理由です。小さい頃から遊び場は工場でした。三代目の親父が働いている姿はいつも身近で、何となくいつか自分も石屋をやるのだろうなあと思っていました。でも、大学卒業後、一般企業に就職しました。石屋とは全然関係のない電機メーカーでのシステムエンジニア(SE)の仕事です。就職時も石屋の事を考えなかったわけではないのですが、世の中の業界を知って、社会勉強をしてから石屋をやるのもいいのかなって。ただ、そこの業界にはまってしまって結構長いこと仕事をしていました。気づいたら、「あっ、どうしようかなぁ」っていう。コンピューターの業界で一生懸命やってきたので、そのまま行くか、全部やめて石屋をやるか、結構悩みました。
その時期はどの様にお仕事をされていたのですか?
もうね、滅茶苦茶働いていました。夜は9時以降にしか帰ってきたことないかも。終電は当たり前。ホントに馬車馬の様に働いていたので考える余裕もなくて。それを二十代ずっと続けていて、三十歳になるにあたって家どうしようかなって若干心配になりだしました。ただその時に結婚をしてイタリアへ旅行に行きました。イタリアの彫刻をいろいろ見ていて、ダビデ像とか教科書に出てくるような物は本当にすごいなあと。こんなものが石で出来ている。まあ石は大理石で違うし、うちは彫刻石屋ではないのですが。一応IT企業では自分なりに先端の事をやっていると思っていたのですが、ふと、ああいう伝統的なものが何かちょっと良く見えて。折角うちは石屋をやっているのだから、なんとか家を継げないかなって。全国的に見てそんなにたくさんある訳でもないので、石屋になろうと決意して会社を辞めました。
会社を辞める時は、相当な決心が必要だったのではないですか?
そうですね。一生懸命やっていたので、感じとしては高層ビルから飛び降りるようなぐらいでした。子供も生まれていたので、家庭のことを考えると心配でした。でも嫁さんが、そんな思いがあるのならやってみたら、と後押ししてくれました。
いつから石の勉強をしてたんですか?
小さい頃から石のお手伝いをしていました。トラックに灯篭を積んで、父親と一緒に全国に運んでいました。石の道具は子供の頃から遊びながら慣れ親しんでいました。ただ、本格的な技術や知識はなかったので、石屋の仕事を始めてから、岡崎技術工学院に入って勉強をしました。
石の勉強はどんなことするんですか?
道具を使っての実技があります。また講義も多く、灯篭の歴史や形の名前なども教えてくれます。お墓屋さんも多いのでお墓の寸法やそのいわれも。あと石の質ですね。こういう所からこういう石が採れる。日本国内だけでなく全世界の石についても。中国、インド、南アフリカ、ポルトガル、アメリカ、スウェーデンなどいろいろな石の質を詳しく知ることができました。
前の職から石屋さんになった時に両親の反応とか何かありましたか?
さっき機械のところで仕事していたのが親父なのですが、職人気質であまりしゃべらないです。今一緒に住んでいるのですけど、そんなに会話も多い訳ではありません。なので、石屋になろうとした時も、何も言われなかったですね。石屋を継がなきゃいけないって言われたこともないし、こうしなきゃ、ああした方がいいって言われたことも無かったです。いろいろ考えて会社辞める、家で仕事するって言ったけれど、それに対してうんとも何とも言われなかった。石屋を始めてまずは工場の中で黙々と石をたたいていたのですが、親父からは具体的な指導はあっても、経営方針とかこういう仕事をした方がいいとかはないですね。ちょっと変な感じです。
石屋になってよかったなぁって思う所は、何かありますか?
灯篭とかお墓を建てた時に、ありがとうって感謝されるとやっぱり嬉しいです。灯篭を入れてくれるような方は、事業に成功された方とか会社起こして大きな家を建てられた方もいます。ひとつのステータスというか、実用的ではないものかもしれないけれど、見て楽しむものを入れるってのはとても喜んでもらえます。心が豊かというか。お墓の場合は、身近な方が亡くなられて落ち込んでる人も多いです。でも、完成すると本当に良かった、一区切りついた、とほっとしながら喜んでもらえる。その一言で、一生懸命建ててよかったなって思いますね。
出っ張りを作るのと穴掘るのとでは難しいとかあるんですか?
穴を掘るときは、形を整えた材料に穴を掘っていけばいいわけです。だけど、出っ張った物を作ろうと思った時は、材料をその分長く用意しておいて、余分なところを削り取らなければいけないのです。灯篭の柱を作る時には、土台と組み合わせる部分『ほず(ほぞ)』を作ります。この分だけ材料が余分に要りますよね。材料も余分にかかるし、切らなきゃいけない。一面平らに切るよりも、周りを出っ張らして切るのって結構大変です。そういう意味では、出っ張りを作る方が難しいです。でも、そこは大事なところなのでしっかりやります。
そういう時にここは削るべきではなかったとか、失敗しちゃった時とかどうするのですか?
基本失敗したらそこでもう駄目です。石は戻すことが出来ないので、角が取れてしまったら、それはもう商品として使い物にならない。直すことが出来ないのでとても気を遣います。
今後の組合の中で新しいプロジェクトとかありますか?
青年部という形ですけれども、「オカザえもん」のベンチを石で作る計画があります。今、「オカザえもん」はとても人気がありますよね。そういう新しいものを石で作るのは大変ではあるのだけれど、時代の流れにのって新しいものもどんどん作っていきたいです。個人的には、できたら海外に発信していきたい。今まで石は輸入することばかりでした。だから、伝統文化的なものを海外に広めていけたらいいなと思っています。どういう形であれ、岡崎の石を持ち込んで世界の人に知ってもらう。日本の文化の一つとして。それを個人でもいいし、青年部でもいいからやっていきたい。今までよりももっと世界に目を向けて進めていけたらと思います。
例えばどのようなことですか?
うちだったら灯篭を作ってこれが日本の伝統だと。フランスとかイタリアではとそういうものに興味をもってくれるのではないかと思います。古くから文化的なものが発達しているので、メイドインジャパンの文化や技能を見せたいですね。石灯篭は奈良・平安時代からあって今も続いていることを知ってもらいたい。それも若いうちに。30代40代のメンバーで行きたいなあと思っています。業界的にはなかなか厳しくて後継者が少なくなってきてはいるのですが、いるメンバーで前向きにやっていきたい。
経済産業省のクールジャパンにうまく乗っかっていければいいのでは?
そうですね。日本政府とコラボレーションして。去年もオランダで行われた日本政府が出資した博覧会にうちも出させてもらいました。親父の作品です。
自分の作品も出してみたいですか?
出してみたいです。いい作品をつくって政府とコラボレーションして。クールジャパンはテレビではよく見るので、クールジャパンだったら灯篭とか合うと思うのだけどな。
アニメとかの他に日本の伝統工芸も出していくというのもあるので出せると思います?
そうなんですか。詳しくは知らないのでもっと情報を調べて、やりたいですね。
水道代はどれだけかかりますか?
普通の家庭に比べたら比較にならないですね。市の水道も使ってはいるのだけど、工業用水というものがあって、一回使ったものをろ過して再利用しています。何十倍も水道代がかかってしまうので組合で工夫しています。電気代も高いですね。節約してますね。
水が流れたままだったのでどれくらいかかるのかと思っていました。
水を流したままやらないと削っているときに熱を持ってしまうのです。水がないと壊れやすいんだよね。
前の仕事をしていたから活かされたことはありますか?
私は、以前はIT企業で働いていたのでコンピューターが使えます。CADを使って仕事ができるので技術的な面でみても役立っています。インターネットでホームページを作成することも。また、会社の組織の関わりだったり、営業の仕方なども知ることができてよかったなと思います。岡崎の石屋さんは、自分の商品を宣伝することが苦手という人が多いように思います。せっかく自分で作ったのだから、それを海外に持っていく勢いで。どこまでできるかわからないけれど、そういうところで活かしていきたいなあと思います。
~実際に作業などを拝見して、伝統や技術の素晴らしさを感じることができました。また組合が団結して一つのプロジェクトを成功させようとする取り組みも積極的に行っていてもっと岡崎の石屋の素晴らしさを全国的に広めていければよいなと思いました。実際に現場でしかわからない大変さや貴社のお客様に合わせた商品の工夫などあらゆる場面でとても勉強になりました。お忙しいところ取材に応じていただきありがとうございました。~
インタビュアー:皿井、星野
撮影:皿井、星野
原稿担当者:皿井、星野
企業情報
企業名 |
有限会社 杉本石材店 |
代表者名 |
杉本敬雄 |
所在地 |
〒444-0009 岡崎市小呂町字新志5-69 |
TEL |
0564-24-6771 |
FAX |
0564-24-6788 |
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